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肝斑にレーザートーニングの是非について③

2020.06.30

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ブログ 美容皮膚科

肝斑にレーザートーニングの是非について③

さて前回のブログ(2019年2月10日投稿)の予告通り、今日は『美容業界の深い闇』についてお話をします。

その前に今までのブログのおさらいです。

〇肝斑の原因は主に炎症である。
〇よって肝斑の治療にレーザーは禁忌!と言われていた。
〇肝斑の治療はトラネキサム酸内服という消極的な保存療法が基本であった。
〇しかし2010年前後から、肝斑にレーザートーニングが極めて有効であると言われ始めた。
〇トップハット型というレーザービームの形を実現した先進のMedLiteC6というQスイッチ型YAGレーザーが爆発的に普及した。

MedLiteC6

成人女性の半数近くが悩んでいるといわれる肝斑治療に、技術革新によってブレイクスルーが起きたと思われました。事実、当時私の勤めていたクリニックにもMedLiteC6が導入され、瞬く間に患者様が殺到する人気の治療のひとつになりました。

そして数多くの美容外科・美容皮膚科がこのレーザーを続々と導入しました。

しかしながら、実際に患者様に施術をするとあまりキレが良くないことはすぐに分かりました。

どうしてもメーカーのパンフレットに掲げられているようなしっかりとした効果を出すことがなかなか難しいのです。
メーカーのパンフレットは確かに宣伝ですから、所謂ホームラン症例とも言えるような出来過ぎの症例が掲げられている、というのももちろん理解はしています。と同時に、きちんとした企業によるとても高額の機器ですから、全くの嘘の効果の症例もないであろうとも思っていました。

いろいろパラメータを変えたり、患者様に合う出力や頻度にしたりと工夫を凝らしました。

が、やはり実際はイマイチの効果の人ばかりでした。

確かに少ないながらも一部の人からは、良くなってきた、だんだん薄くなってきた、という感想を頂くことが出来ました。

しかしながら、完全に肝斑を取り去ることは難しいですし、更なる効果を求めてレーザートーニングを繰り返し続けると、決まってかえって炎症が強く出て、肝斑の悪化を招くことが多くなりました。

もしかしたら、良くなってきたと言って頂ける患者様は、もともと肝斑以外に普通のシミ(老人性色素斑(日光性色素斑))や雀卵斑(ソバカス)があってそれらが改善しただけである、若しくは同時に処方したトラネキサム酸やビタミンCの効果によって肝斑が改善したもの、と言っても矛盾しない症例ばかりとも思われました。

実際に多くの処置を行うナースはより身近に肌で感じるのでしょう。自分たちの肝斑にレーザートーニングを行うナースは殆どいなくなりました。

そんな折、大阪のK医師と横浜のY医師を中心として、肝斑に対するレーザートーニングの是非をめぐって激しい論争が繰り広げられていることを知りました。

レーザートーニング推進派のY医師をはじめとするドクターの主張に対し、レーザー治療の大家であるK医師が疑問を呈していたのです。

ここにきてようやく自分の考えの正しさが分かりました。

今まで、レーザートーニングで思ったような効果を出せないのは、自分の技量に問題があるのではないか。肝斑の診断から治療方針の見立て、継続治療中の調整など、自分の力量を疑ったこともありました。自分に自信が持てなくなるほど、美容業界ではレーザートーニングが破竹の勢いで普及していたからでした。

ここで誤解のないように申しておきます!
MedLiteC6はとてもよくできた優秀な医療機器です。

何と言ってもトップハット型という先進の技術で安定したムラのない照射が可能であることは前回も触れました。そればかりか、故障も少なくメンテナンスも楽であり、取扱業者の対応も迅速丁寧です。
使い勝手も良く、老人性色素斑(日光性黒子)、雀卵斑(ソバカス)やADM(
Acquired Dermal Melanocytosis/後天性真皮メラノサイトーシス/
遅発性両側性太田母斑)の治療まで大変効果的で大活躍してくれます。

それだけにとても惜しいのです。
この優秀なレーザーをもってしてもやはり肝斑の治療は難しいのです。

恐らくもともとMedLiteC6は肝斑に対するレーザートーニングで開発されたものではなかったのでしょう。このことは、元来、白色人種には肝斑が少ないとされていること、またメーカーのホームページにおいても肝斑に対する治療はあまり強調されていないこと、などから推測されます。

つまり、MedLiteC6のレーザー機器に罪はないのです。

この優秀な機器を『肝斑にとてもよく効く!』と宣伝し始めた側、それを信じて導入した側、更に商機ありとみて大々的に宣伝し、その宣伝に科学的な裏付けなく無批判に受け入れた側、いろいろな立場で責任があろうと思います。

そして効果を出すのが難しいと判断されるや否やすぐに方向転換をすべきですが、高額な機器であったがためになかなか撤退しなかったこと。

『肝斑に著効する!』と言った高名な先生方は、そのプライドが邪魔してなかなか発言を撤回できなかったのではないか。そしてメーカーや販売元から高額な報酬をもらって講演依頼を受けている以上、否定的なことはなかなか言えない。
この辺りが美容外科業界の深い闇でしょう。
引っ込みがつかなくなってしまった面が否めません。
良識に欠けている面が否定できません。
私も含め、美容業界は猛省しなければなりません。

このことに関して、次回、更に深く掘り下げます。

そして気になる新たな動き、つまりPICOレーザーに関しても言及したいと思います。

世界一優しいドクターを目指して!
Original Beauty Clinic GINZA
美容外科専門医・美容皮膚科医 佐藤 玲史