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肝斑にレーザートーニングの是非について④

2020.07.10

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ブログ 美容皮膚科

肝斑にレーザートーニングの是非について④

さあ、今回も気になる肝斑のお話です。

まずは今までのおさらいです。

〇肝斑の原因は主に炎症である。
〇従って炎症を惹起するレーザーは、肝斑には禁忌である。
〇今までは肝斑の治療は、トラネキサム酸などの内服という消極的な治療であった。
〇そこに肝斑にレーザートーニングが著効する(かも)という知見が生まれた。
〇MedLite社のC6によるレーザートーニングが爆発的に普及した。
〇しかしレーザートーニングによっても肝斑治療に難渋することが多いことが分かってきた。
〇利害関係、プライド、学会内での立ち位置、因習などにより、一度広まった治療法を方向転換し、慎重になることが難しい側面があった(美容業界の深い闇)

私自身は、レーザートーニング自体は、老人性色素斑(日光性黒子)や雀卵斑(ソバカス)、肌の肌理などに効果的であるばかりか、お肌の代謝を促進すると考えています。
つまり肌のターンオーバーを早めるであろうと考えています。
この代謝を早めることが、ある程度肝斑の治療に貢献することがあるのかもしれません。

つまりレーザートーニングは、色素を積極的に排出し、そのことでくすみが取れるのです。

しかし効果を出そうとすればするほど、つまり頻回に行ったり、出力を上げれば上げるほど、炎症の影響が否定できず、肝斑をかえって悪化させてしまうこともあると考えます。

クリニックも医療機関であることは勿論ですが、利益を出さなければ経営を続けられませんし、借金をしたらその回収をしなければなりません。(これは大病院や大学病院でも同じです)
ですので、高額な医療機器を購入したクリニックは、その効果に多少の疑問が生じても、購入代金に見合う売り上げを計上するために、施術を続けざるを得ない事情があります。しかも他の競合クリニックが盛んにやっているのであったら尚更辞めるわけにはいきません。

YAGレーザーによる肝斑治療の名前を冠したクリニックも登場したほどです。

ただ今回は、早く撤退すべきでした。
レーザートーニングが効かないだけで害がないならまだしも、悪化させてしまうことがあったり、白斑という治療に難渋する症状を生じさせてしまう可能性もあったからです。

前回も書いたように、MedLite社のC6はとても優秀な機器ですので、何も無理して肝斑治療を続けなくても、他の治療を積極的にすべきでした。例えば、老人性色素斑(日光性黒子)、雀卵斑(ソバカス)やADM(Acquired Dermal Melanocytosis/後天性真皮メラノサイトーシス/遅発性両側性太田母斑)の治療に大変効果的なのですから。

それでも不思議なことに、当時の学会や勉強会でも盛んにレーザートーニングの著効例の報告がなされていました。これらの症例は前回述べたように、所謂ホームラン症例であったのでしょう。もしかしたら肝斑以外のシミが薄くなったり、お肌の肌理が整うことで効果があったように見えたのかもしれません。更にトラネキサム酸を同時に内服していたら、その効果であったのかもしれません。

メーカー、販売代理店、ドクター、いろいろな立場での利害関係、プライド、利潤追求・・・、様々な事情があると思います。

このような時にやはり求められるのは患者様の立場に立った視点です。

この視点が欠けていると長い目で見るとやはりうまくいかず、結局のところマイナスとなるのだと考えます。良い教訓としなくてはなりません。
さて、ここで一つ興味深いトピックスがあります。

それはPICOレーザーの登場です。

PICOレーザーとは「ピコ秒(1秒の1兆分の1)」で照射し、従来のレーザーよりも格段にダメージが少なく、炎症を抑えることが出来ます。
従来のYAGレーザーによる治療では、メラニンに熱を発生させて壊すものでしたが、PICOレーザーは熱作用ではなく、衝撃波で色素を砕くので、炎症後色素沈着を起こしにくくなりました。
つまり、炎症が少ないということは、肝斑の治療に使うことが出来るかもしれない、ということになります。

しかしながら美容業界は、前回の教訓を忘れてはなりません。慎重に有効性・安全性を見極めるべきです。

ですが早くもPICOレーザーを積極的に肝斑に用いているクリニックがあるようです。

要注意です!!

ですが、前回のブームに比べると、静かな感があります。やはり美容業界もそれほど捨てたものではありません。理性的な判断をしているところだと思います。
PICOレーザーが肝斑治療に朗報をもたらしてくれることを希望しつつ、あくまで冷静に理性的にその効果判定をしていきたいと思います。

勿論、当院もPICOレーザーを導入しています。

最も信頼性が高いサイノシュア社のPICOレーザー「PicoSure」です。

このことについて、次回以降、詳しくお話をしたいと思います。

世界一優しいドクターを目指して!
Original Beauty Clinic GINZA
美容外科専門医・美容皮膚科医 佐藤 玲史