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肝斑にレーザートーニングの是非について⑤

2020.07.20

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ブログ 美容皮膚科

肝斑にレーザートーニングの是非について⑤

さて今回で気になる肝斑のお話に「一応の」完結を致します。

主にPICOレーザーによる肝斑治療についてお話をします。

まずは今までのおさらいです。

〇肝斑の原因は主に炎症である。
〇従って炎症を惹起するレーザーは、肝斑には(基本的には)禁忌である。
〇そこで今までは肝斑の治療は、トラネキサム酸などの内服という消極的な治療であった。
〇そこに肝斑に対して、弱い出力で照射するレーザートーニングが著効する(かも)という知見が生まれた。
〇MedLite社のC6によるQスイッチYAGレーザートーニングが爆発的に普及した。
〇しかしQスイッチYAGレーザートーニングによっても肝斑治療に難渋することが多いことが分かってきた。
〇利害関係、プライド、学会内での立ち位置、因習などにより、一度広まった治療法を方向転換し、慎重になることが難しい側面があった(美容業界の深い闇)

〇ここで技術革新によりPICOレーザーが登場した
〇Qスイッチレーザーより照射時間の短い(PICO秒=一兆分の一秒)PICOレーザーは炎症を抑えることが出来る
〇PICOレーザーによるPICOレーザートーニングなら肝斑を悪化させずに治療しうる(かも)という機運が高まった

PICOレーザーについておさらいです。

PICOレーザーとは「ピコ秒(1秒の1兆分の1)」で照射し、従来のレーザーよりも格段にダメージが少なく、炎症を抑えることが出来ます。

従来のYAGレーザーによる治療では、メラニンに熱を発生させて壊すものでしたが、PICOレーザーは熱作用ではなく、衝撃波で色素を砕くので、炎症後色素沈着(PIH)を起こしにくくなりました。

つまり、炎症が少ないということは、肝斑の治療に使うことが出来るかもしれない、ということになります。

しかしながら美容業界は、前回の教訓を忘れてはなりません。

今度こそ慎重に有効性・安全性を見極めるべきです。

勿論、当院もPICOレーザーを導入していますが、当然、慎重に治療をしております。

数社のメーカーがPICOレーザーを開発していますが、当院は最も信頼性が高いCYNOSURE社のPICOレーザー「PicoSure」を採用いたしました。

前回お話をしたように、MedLite社のC6というYAGレーザーもそしてこのCYNOSURE社のPicoSureというPICOレーザーも肝斑を治療目的に開発されたのではないということです。

ここにあるように、「皮膚両性色素性疾患治療用レーザー」として医療機器承認を取得しています。

経験上、肝斑でも表皮近くに色素があり、濃くはっきりとしたタイプには著効する時があるようです。逆にほんのりと淡い肝斑に関してはかなり頻度を抑えたり慎重に行わないと、増悪してしまうことがあるように思います。トラネキサム酸などの内服の併用を必須としています。

まだまだPICOレーザーによるトーニング治療はまだはじまったばかりです。

PICOレーザートーニングの効果や安全性などまだまだ未解明ではあるものの、個人的には有効性が高いと期待しています。適応を選び、抗炎症剤(トラネキサム酸)の内服を併用するなどして慎重に治療を実施していくとともに基礎的研究が積み上げられていくことが必要であると思います。

更なる経験値を重ねていきたいと思います。

世界一優しいドクターを目指して!
Original Beauty Clinic GINZA
美容外科専門医・美容皮膚科医 佐藤 玲史