なぜ医師の説明は煮え切らない?

病院やクリニックで医師から「異常はありませんよ」「大丈夫ですよ」とはっきりと断言して欲しいのに、何かと言い訳がましく長々と曖昧な説明をされ、すっきりせず、逆に不安を感じた方も少なくないのではないでしょうか。

なぜ医師の説明はいつも煮え切らないのでしょうか?

もちろん私ども医師もはっきりと物事を言ってあげて、患者様を安心させてあげたいのです。ですが、実はどうしても断言できない苦しい事情があります。

「絶対にない」とは言えない難しさ

検査結果を申し上げるとき、異常が「絶対にない」と言い切ることは原則できません。

厳密にはどれだけ優れた検査であっても「ない」ことを完全には証明はできないからです。

例えばCTの検査を考えてみて下さい。

CT(computed tomography)とは、X線などの放射線を利用して物体を走査し、コンピュータを用いて処理することで、物体の内部画像を構成する技術、あるいはそれを行うための機器のことです。 一方向からX線を当てて一枚の写真を撮る単純X線検査(レントゲン)と違って、CTでは体内の状況を奥行きを持って画像化できます。その為、病状をより精密に知ることが可能なため、医療現場では必須の検査となっています。

そんな優れた検査であるCTをもってしても限界があります。

例えば、多くのがんは進行するとリンパの流れに乗ってリンパ節に転移します。そして転移したリンパ節の中でがん細胞が増殖すると、リンパ節は大きく腫れてきます。

もしCT検査で2㎝、3㎝といった大きなリンパ節が写っていれば、「異常あり。転移の疑いあり」と指摘できるでしょう。

しかし、がんが転移したばかりのリンパ節の場合はどうでしょうか。

「転移を起こしているのにサイズはまだ正常」ということが起こりえます。医学的には明らかに病気が存在するのに、検査でそれを発見できない、ということになってしまいます。

どんな検査にも、可視化できる限界があります。

検査で発見できない病変が隠れている可能性をゼロにできない以上、「異常はありません」と言い切ることは残念ながらできないのです。結果として我々医師は「この検査では異常は見つかりませんでした」と説明せざるを得ません。「ない」のではなく「見つけられない」が正確な表現だからです。

また検査はある一時点でのことしか分からない、という弱点があります。

例えば、交通事故で頭を強く打撲して病院に行き、医師の指示で頭部CT検査を受けたとします。しかし、検査の結果、異常は見当たりませんでした。

自宅に帰ったものの、夜になって頭痛がひどくなってきました。そこで、もう一度病院に行って同じ頭部CT検査を受けると、頭の中に出血していることが分かることがあり得ます。

頭部CT検査は、ある瞬間の頭の状態を静止画として捉えたものです。その数分後、数時間後に、どのように病状が変化するかまでは分からないからです。

最初は異常が発見されなくても、時間をかけてじわじわと出血し、数時間後に撮影したCTで初めて異常が発見されるということが実際あり得るのです。

医師は病気のこうした特性を知っているため、単に「異常はありません」とは言えません。「現時点では異常は見当たりませんが、今後どうなるかは分かりませんので、症状が悪化するようでしたらその時点でもう一度受診してください」と言わざるを得ないのです。それが正しく、そして憶測で物事を言わない優れた医師なのです。

私たちが目指すべきなのは、検査によって病気を正確に言い当てることだけではありません。検査の結果を踏まえて「次にどんなことが起こりうるのか」「次はどのタイミングで、どんな対応をすべきか」を予見するのが重要なのです。

以上の理由から、1回の検査ですっきり安心できるということは少ないでしょう。しかし、どういうことに注意すべきかを医師からきっちり聞き出しておけば、きっと不安は軽減するはずです。

私も普段の診察では、患者様の不安を少しでも軽減して差し上げる努力をしております。

クリニックで皆様のお越しをお待ち申し上げております。

A CLINIC銀座 院長・指導医

美容外科専門医・美容皮膚科医 佐藤 玲史

関連記事

  1. 何故、人はあおり運転をしてしまうのか

  2. スターバックスに学ぶ

  3. 大麻・麻薬・覚醒剤など③

  4. 老後2000万円問題

  5. マイルドやライトが名前につくタバコや電子式タバコは、少しは健…

  6. 人生100年時代

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。